グローバルになった日本の農業問題

小泉首相による昨日の衆議院解散劇で、内閣で解散を決めた折に異を唱えて罷免された大臣が、ただ一人、農林水産大臣だった、という点に着目して、日本の農政について最近思うところを述べたい。

農業・畜産業は長いこと自民党の大票田で、保護主義的な政策が取られてきた。しかし、日本で狂牛病が初めて見つかった2001年ごろを境に、スキャンダルを恐れた農水省の方から保護主義を見直す姿勢が出始めた。牛肉偽装問題でも、農水省の姿勢転換は業界を慌てさせた。

ここには、日本の農政が最早、国内だけの問題ではなく、グローバルな問題になったことが関係している。世界的に、WTO交渉の度重なる決裂がFTAへの傾斜を生んでいるが、最大の原因は各国の農業保護だ。米国の狂牛病に端を発した国内の牛肉輸入禁止は、日米の摩擦要因になっている。捕鯨に代表される食文化の違いも、国民感情に関わる重大な問題として見逃せない。

今回、構造改革を掲げる小泉首相衆議院解散に正面からノーを突きつけて罷免されたのが、いまだグローバル化に強い警戒感を持つ農水省のボスだった、という点は、グローバル化を恐れる国内農業、という図を象徴的に表している。農政は安全保障と違い、世界規模で最優先課題になることは想定しづらいが、それでも各国の農政が貿易交渉を妨げている状況は重くのしかかっている。

都市型政党である民主党が政権を取り、アメリカをはじめとする国際社会から支持を受けるようなタイミングが来るとしたら、案外、この辺の政策がキー的に絡んでくるのかもしれない、と考えている。