キエフで考える(2)

キエフで考える(2)

日本−ウクライナのサッカーW杯代表チーム同士による親善試合を観戦した。サッカーは、否応なく愛国心が高まるスポーツだが、ここウクライナも例外ではない。偶然、ウクライナ応援団に混じって観戦することになったのだが、キエフ市民らが見せた、真の愛国心というよりは「サッカーにかこつけた」愛国心の、無邪気で無責任な一面が、そこにはあった。その模様を報告したい。

3日前にキエフ中心部で花火が打ちあがっているのをアパートから見たとき、何の祭りだか分からなかった。後で知れば、2006年ドイツW杯への初出場を決めたウクライナ代表チームを、10万人(発表)の市民が祝福したという。場所は、オレンジ・レボルーションで市民が終結して不正投票の選挙を再選挙へと追い込んだ、昨年末のあの時と同じ、あのキエフ中心部の独立広場である。

同国チームにとっては、祭りムードを引きずったまま、国民への報告を兼ねた「凱旋試合」だったのが、今回の親善試合である。ホームで負けて、市民を失望させるわけにはいかない。実際、平日の午後5時の試合開始という悪条件にも関わらず、雨の会場では多くの地元サポーターが押し掛けた。ウクライナ国旗をあしらった布を頭に巻き、鳴り物を持ったような若者が中心を占めた。

好意的に言えば、オレンジ・レボルーションと同じで、「騒げればいいや」と考えているような若者たちが、サッカーにかこつけて国歌・国名を連呼している、という図式だったのかもしれない。しかし、ソ連時代を思わせる制服警官が禁止行為を見張っている中、それでもチャンスが来るや座席を蹴るファンたちの姿は、やはりサッカーならではという観がある。度が過ぎる余地が大きいのだ。

私はウクライナ人と一緒に観戦していたこともあり、両国の小旗を小さく振っていた。もちろん、日本チームの勝利を望んでいたが、もし本当に勝っていたら、どうなっていたのだろう?という疑問も残っている。殴られる、唾をかけられる、ぐらいの行為が、絶対に行われない、とは限らない。そういう雰囲気だった。また、旧ソ連で一番こわいのは警官、というのは通説。禁止行為を厳しく咎める姿勢は感じられたが、いざという時、本当に助けてくれたのだろうか。