ロンドンは政治の街

ロンドンを訪れる人は、週末に一度、スピーカーズ・コーナーと呼ばれる広場の一画を覗いてみてほしい。そこでは、政治的な主張を持つ者たちが、旗を掲げた仲間らとともに大声で演説を行い、聴衆たちは各所でスピーカーを取り巻いて、話に耳を傾けている姿を、目にすることができる。

私がいた頃、パレスチナ問題が悪化の一途をたどり、イスラエル軍による虐殺疑惑などが取りざたされた。パレスチナ住民に同情的なロンドン市民に抗するかのように、イスラエルの旗を掲げて熱狂的に演説するユダヤ人の姿などを見かけた。スピーカー同士の論争に発展することも珍しくないという。実際に説得される市民などは皆無だろう。ただ、言いたいことを言う、そういう場なのだ。

ただ、資本主義精神がグローバルに浸透していく時代にあって、脈々と絶えることのないアングロサクソン的なフェアプレー精神の原型を、このスピーカーズ・コーナーに見ることができる。それとも関係するのだろうか、英国の議会システムは、小選挙区制度下、見事な二大政党制を維持している。